タレント知事の
ハレンチ行為の考察
ジューン・アダムズ & 加藤明
2002年(平成14年)12月27日
「タレント知事って誰のこと?」
「本名を山田勇といい、芸名を横山ノックという、日本では全国的に知られ、お笑いで、一世を風びした漫才トリオのリーダー格の人だった」
「ロナルド・リーガンが芸能界出身でカリフォルニア州知事になったことがあるけれども、そんな、たぐいね」
「まあ、それに近いかな。スケールの違いはあるけれどね。とにかく、圧倒的な庶民の支持を得て大阪府知事に当選したんだ」
「それで、その人がハレンチ行為をしたの?」
「そうなんだ」
「具体的には、どんな行為をしたというの?」
「被害者は、泣き寝入りせずに訴えた」
「それは当然なことです。こういう事件では、被害者が泣き寝入りすることが日本では実に多いのよね。あたしも、この事については、以前に取り上げたことがある」
「そうだったね」
「まだ読んでいない方はぜひ読んでください。ページの題名は次の通りです。女性の権利と尊厳は守られているだろうか? それと、性暴力に対して勇気を持って立ち向かおう。それで、どんな行為だったわけ?」
「被害者は次のように、ハレンチ行為を法定で証言している」
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選挙運動中、事務所に帰る際、横山知事(当時)は、別の車から自分の乗っていたワゴン車に移って来て自分の横に坐り、自分と知事の膝に毛布をかけて、その下で自分の下半身に手を延ばして30分ほど猥褻行為をした。
- 運転手に助けを求めようか、と思ったが、運転手は事態を黙認しているようで、薄笑いを浮かべていたため、助けてくれそうもない、と断念した。
- 恐怖のあまりすくんでしまい、されるままになっていた。
- 身をよじってかわそうとしたが、止めてくれなかった。
- 横山知事のこういった行為については、前々から他の運動員の女性に警告を受けていて、「何かされそうになったら、トイレに逃げて」と言われていた。
- ガソリンスタンドの近くに来たとき、「トイレに行きたい」と言って、一旦車を降りた。そのとき知事も一緒に車を降りてトイレに行ったと思う。
- その後また車に乗り込み、さらに猥褻行為を受けた。
「もし、この女性の証言がほんとうならば、これはぜったいに強制ワイセツ行為だわ。それで、この事件が裁判になった経過というのは、どうなっているの?」
「平成11年(1999年)の秋、大阪府知事選挙に再選を目指して立候補した横山ノック氏は、選挙運動中、アルバイトの運動員の女性(21)に強制ワイセツ行為をした、として慰謝料1500万円を要求された」
「それで?」
「横山氏は民事裁判での答弁を拒否、事実無根、と突っぱねたものの、『議会の審議進行に影響する』として、請求された慰謝料を支払うことで訴訟をかわそうとした」
「その辺から、もうおかしいわね。もし、ワイセツなことをしていないのなら、そんなことは決して言わないわ。これでは、ハレンチ行為を認めたのも同然でしょう?」
「ぼくも、これではクサイと思うね。そんなわけで、原告側は『強制猥褻行為』を主張して刑事訴訟を起した。その間横山氏は過労を理由に入院、さらに大坂府知事の座を辞任するなどして裁判を回避しようとする様子が見られた。しかし、相手方の主張は変らず、出廷を余儀なくされることになった。と、こういうわけだ」
「これでは、誰が聞いても、横山氏は初めから、ハレンチ行為を認めて、防戦に回っているようなものじゃないの?」
「確かに、そんなところが見受けられる。横山氏は民事裁判では答弁を一切拒否し、マスコミに対しても『事実無根』『陰謀』等のコメントを押し通してきた。しかし、刑事裁判では『猥褻行為』を認めた」
「この辺の意識なのよのね、あたしがいつも日本人にたいして不信感を持つのは」
「それはまた、ずいぶんと手厳しいね」
「だって、そうでしょう?横山氏はウソをついてたわけでしょう。日本でも言うじゃない?『ウソは泥棒の始まり』だって?」
「それは、確かにその通り」
「しかも大坂府知事という、政治にたずさわる立場になったわけでしょう?そのような人が、公然とウソを言うなんて、これは欧米では、絶対に許される行為ではないわ。ハレンチ行為をしたかどうかの以前に、政治家としての、いいえ、人間としての、品格、人格の問題です」
「それは厳しいねェ」
「ちっとも厳しくなんかないわ。これは、あたりまえな問題よォ」
「ボーダレス社会になってきたんだから、確かにそんな風に受けとめるようにならねばならないんだろうけれど、まだ、日本ではそこまで割り切って物事を考える人がそう、多くはないようだ」
「ヘーェ、そうなの? あたし、そんなこと常識だと思うわ。それで横山氏はどう言っているわけ?」
「彼の主張はあくまでも『合意』によるもの、と主張して、原告である被害者の女性が嫌がっていたとは思わなかった、との見解を通していた」
「それは男の身勝手も、はなはだしいわ!被害者の証言したことをもっと真面目に聴くべきだわ。この女性は前々から他の運動員の女性に警告を受けていたのよ。『なにかされそうになったら、トイレに逃げて』と。もうはっきりしているじゃないの!この人は被害者だけに限らずに、他の女性にも、同様なことをしていたんじゃないの。日本の諺にもあるでしょう?『火のないところに煙は立たず』というのが」
「確かにそういう諺はある」
「この裁判では日本人の男の嫌らしさが、すべてさらけ出されている感じだわ。ウソはつく。女の反応を自分勝手に解釈する。悪いことを指摘されると、なんとかヘリクツをまくしたてて、逃げ惑っている感じ。あたしに言わせてもらえば、大阪という大都市を政治的に取りまとめてゆく人が、こんな考え方で凝り固まっているということが信じがたい」
「ジューンは、ホントに厳しィー見方をするねェ?」
「ちっとも厳しくないわ。あたし、あたりまえな事を言ってるつもりよ」
「まあ、まあ、そんなに興奮することは、ないじゃないか?」
「加藤さんは、どうして、こういう嫌らしい男の肩を持つの?」
「ちょっと待ってくれ。僕はなにも、この人物をかばっているんじゃない」
「でも、なんとなく、そんな風に聞こえるわ。もしかして、横山氏は加藤さんの遠い親戚?」
「急に何ということを言い出すんだい? 僕の一族には、ハゲは居ないんだ」
「あらァー、ハゲって、差別用語じゃないの?」
「日本では最近そういうことになっているようだね。僕が子供の頃は、あたりまえの言葉として通用していたんだけれど。しかし、どうしてジューンはそんなことまで知っているんだい?」
「あたし、日本語学校で勉強したのよ。先生がそう言ってました」
「そういうことは、よく覚えているんだね?」
「他のことだって覚えてますよ。それより、裁判はどういうことになったの?」
「翌年、つまり、平成12年(2000年)の6月20日、論告求刑公判で、検察側は、『執ようで、悪質この上ない』として、被告に懲役1年6ヶ月を求刑した」
「そうですよ、それが当然ですよ。それで判決は?」
「8月10日に裁判の判決が出た。判決は有罪、求刑通りの懲役一年六ヶ月、但し執行猶予三年がついた」
「当然といえば、当然だけれど、あたしには、それでも軽いという感じだわ」
「ジューンは厳しい!彼は知事の座を辞職し、民事で慰謝料1100万円を支払い、刑事訴訟で有罪となり、ということは前科者になったわけだ。その上、前回、知事を務めた際の退職金5千数百万円の返還まで求められている。充分、罰を受けたと思うよ」
「庶民の政治家に対する信頼と期待を裏切ったということを考えれば、あたしは当然の報いだと思うわ」
「しかし、『懲役1年6ヶ月』が、求刑として重いと考える人もいる」
「どうして?」
「強制猥褻罪に該当する条文は、次にようになっているんだ」
十三歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上七年以下の懲役に処する。
三歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
(刑法176条・177条)
「そういう人たちが問題にしているのは、この条文にある、『暴行又は脅迫を用いて』という点だ。第一回公判で、被害者の女性が証言に立ったんだけれど、カーテン越しに証言をした、ということで話題になった」
「どうして、そんなことしたの?」
タレント知事の
ハレンチ行為の考察
(PART 2)